「ひとつだけのいい方法」
私の電話の話にSさんは驚くこともなく、「ひとつだけいい方法があるんだよ。今から相談センターにおいで。」その言葉に導かれるようにすぐさま労連の事務所にむかいました。
Sさんは、言いました。「スーダラ君、労働組合に入ろう。君が組合に入ることで、残業代の問題も解決できるし、ほかのみんなの賃金が下がることもない。もちろん、そのことで、君が会社を辞めさせられることもない。一番いい方法だし、これしかない方法だよ。」
一人から入れる労働組合があることは知っていました。でも、ひとりはやっぱりひとり。それが問題を解決できることだとは思っていませんでした。しかも労働組合に入るなんて、それだけで会社に反旗を翻しているようなこと。「ほんとにそんなことで問題がクリアできるんですか?」Sさんは、そのあと、労働法、日本国憲法で労働者の権利が保障されていることを詳しく説明してくれました。つまり、労働組合に入ることで、直ちに、法律的に身分を保証されるということなのです。正直、資本主義国ニッポンにそんな制度があるなんて知りませんでした。「憲法で守られる。」それは、力強い味方を手にするような安心感
ではあります。
でも、やはり、それはとても勇気のいることでした。もしも、組合を名乗れば、会社が集中攻撃を浴びせるだろう、私生活までつけまわして、「あいつはアカだ。」と吹聴され、家族もろとも町から追い出されるのではないか
?・・・今思うととんでもない妄想でしたが、そんな恐れのために、私は、Sさんの前で沈黙してしまいました。「直ちに、公表する必要はないんだよ。その間に、しっかり学習して、力をつけて、時機を見た上で、結成通知を会社に出す。団体交渉で要求をぶつける。時間外手当の完全支給と過去の不払い残業の支払いが中心だね。その代わりに、全体の給料を下げるなんて通るわけないし、バカにされるだけだから、会社も言わないだろう。」「まだ時間は、じゅうぶんあるし、今すぐ決めなくてもいいよ。周りの人とも相談してごらん。」・・・「わかりました。妻と相談します。」
その夜、妻にこのことを話しました。このごろ、子供のことしか話題がなくなっている私たち。まわりくどい私の話を打ち切るように、「はいれば?あんた、いちど言い始めたら、あとにひかないじゃない。それに、もう家計がギリギリなのよ。お金、もらってきてよ。」「おまえたちがいやな目にあわないか?」妻は、フンッと一笑して、「アー、いそがし。」と台所の洗い物に戻っていってしまいました。・・・なんだよ、おれの給料がこの家の唯一の収入だろうが。まじめに考えろよ。内助の功って言葉を知らんのか?クソ
、悩んで損した、組合はいるぞ!・・・。それが、妻の作戦だったのかどうか知る由もありませんが、次の日私は、○○一般労働組合の加盟申込書をSさんに届けました。「ひとつだけのいい方法」を選んで進むことにしたのです。・・・つづく
全労連労働相談センター0120-378-060(0120みなはいろうぜんろうれん)。-これ全国のどこからでも近くの地域労組につながるそうですよ-
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